中東初心者向け、アラブ人の名前。(と、MBS)
わたしはアラビストでもなんでもなくアラビア語も全然できないただの中東好きです。
中東初心者の方に同じ中東初心者として、解説メモを残しておこうと思います。
すっごい基本的なことですが、アラブ人の名前というのは、
名前 お父さんの名前 家の名前
例えば、◎◎家出身の◉◉の子どもの◯◯さんの場合
◯◯ bin ◉◉(女性ならbint ◉◉)Al ◎◎(家の名前)
という風になってます。
特に、スンニ派の男性の名前はMohammadとかAhmadとかJassimとかOmalとかお決まりのものが多く、一族に何人も同じ名前の人がいるので、お父さんの名前をつけて区別したり、それでも間に合わないときはお父さんのお父さんの名前までつけて区別するみたいです。
サウジアラビアはサウード家のアラビアという意味で、第一次世界大戦中にイギリス軍の後押しで(アラビアのロレンス的な)あの辺りを制圧したアラブの部族のうち、サウード家のアブドゥルアジーズ・イブン・サウードという人が、他の有力部族ラシード家を追い出して打ち立てた絶対君主制国家です。
なので、基本的に王族の苗字は家の名前であるAl Saudになります。
現在のサルマーン国王に至るまで、20人〜の王妃を持ち、子どもが89人いるとされる初代アブドゥルアジーズ国王(←英雄色を好むを地で行ってる)のお子様たちが順番こに回して来ているので、
第二代国王 サウード・ビン・アブドゥルアジーズ・アル・サウード
……
第六代国王 アブドゥッラー・ビン・アブドゥルアジーズ・アル・サウード
第七代国王 サルマーン・ビン・アブドゥルアジーズ・アル・サウード
となります。
ムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子
つまり、今のサルマーン国王の息子だということが名前の時点で折り込み済みになっています。
サルマーン国王が即位してから三ヶ月後にムクリン・ビン・アブドゥルアジーズ皇太子が皇太子を降りて従兄弟のムハンマド・ビン・ナーイフ王子(サルマーン国王の兄の子)が副皇太子から皇太子になり、ムハンマド・ビン・サルマーン王子(MBS)が副皇太子になったのですが、ここで
サルマーン・ビン・アブドゥルアジーズ国王
ムクリン・ビン・アブドゥルアジーズ皇太子→廃嫡
ムハンマド・ビン・ナーイフ・ビン・アブドゥルアジーズ副皇太子→皇太子
ムハンマド・ビン・サルマーン・ビン・アブドゥルアジーズ王子→副皇太子
と書くと、ムクリンさんは初代のお子さんでサルマーン国王の兄弟、二人のムハンマドは孫世代だと分かり、さらに、MBSの方はサルマーン国王の息子だと分かります。つまり、サルマーン国王は弟を廃して甥を格上げし、即位時から補佐役についていた息子のMBSを副皇太子としたということです。つまり、将来的には甥をすっ飛ばして息子に譲位するつもりなのでは?と取れるし、実際研究者や専門家の方でそう思ってる方は結構いるみたいです。
サルマーン国王は80代とご高齢ですがMBSはまだ31歳(と言われている)と若いので、もし彼がお父さんから直接譲位されると、かなり若い王様の誕生になります。
顔もイケメンで背も高くて素敵な微笑みの王子様💖ですが、彼が権力を持ってからサウジは変な野心を出して迷走してる(イエメン介入とかカタール断交とか)ので、この王子がヤバいんじゃないかって思ってる人は結構いそうです。
少なくともわたしは、彼が王様になるとえらいことになりそうで今からドキドキしてる😱
まだ若いから、治世も長くなるだろうし、この調子だとサウジの最後の王様になるんじゃない???とか、中東で大戦争が起こるんじゃないか???とか。
お金持ってるし世間知らずで誇大妄想(?)入ってそうだから、ある意味、金正恩よりヤバいと思う。
全部想像ですけど、絶対君主制のお金持ち国家で傅かれて育ち、30前に権力握ったら
「何ひとつ意のままにならないものはない」
って思ってもおかしくないんじゃない???という。彼の同母弟が駐米大使になってるし、アメリカの大統領はお金大好きトランプさんだし、彼の一存の影響力はすごいと思います。
『サウジのアブドラ国王』でお馴染みだったサウジの先代国王と紛らわしいのが、ヨルダンのアブドゥッラー国王(彼はお母さんがイギリス人で英語ペラペラなのでヨーロッパでも割と親しみを持たれている)ですね。
アブドゥッラーは神の奴隷という意味(日本でも聖隷〜〜って言いますよね)で、アラブではかなり人気の名前みたいです。うちの近所に住んでるシリア人の子もアブドゥッラーくんって男の子がいます。
ママ友の子ども三兄弟はオマル・ヤシム・アフマドでしたね。
別のママ友の子もヤシム。
本当、アラブ人男子は名前被りが多いんで、集まると誰呼んでるかわからなくなりそうです。
アラブの女性名は自分の中のデータが少なくて分かりませんが、男性名に比べて、あんまり宗教的じゃない名前が多い印象。
旧約聖書の名前(サラとか)の他に、花の名前(ヤスミンとか)や、真善美みたいないい感じのアラビア語(サファとか)など。アラブのママ友って言ってもそんなにいるわけじゃないのでサンプル五人くらいです。ごめんなさい。
学生時代にモロッコ人の父とフランス人の母のハーフのイシャムという男の子に会ったことがありますが、彼はイシャム(スペルはHisham)というのはアラビア語(モロッコ語?)で『おおらか(フランス語でgenereux)』という意味だと言っていました。
多分フランス人のお母様が改宗してなかったので、宗教色の薄い名前にしたのだと思われます。(彼も、ムスリムって感じではなかった)
男性の名前でもそういう例もあるということで。
ここでは王族などでありがちなパターンを紹介しましたが、他のパターンもあって、例えば、
Abu ◯◯(◯◯の父親)
というのもあります。
いつも拝見している『中東の窓』というBlogの管理人、abu_mustafaさんこと野口雅昭先生は
Mustafa(野口哲也さん?)の父親
という意味みたいです。ムスタファは『選ばれし者』という意味なので
Abu Mustafa=選ばれし者の父
となります。ハンドルネームが『選ばれし者の父』ってかっこいい💖
Al ◎◎
の◎◎には家の名前でなく、出身地が入ることもあります。
ゲリラやテロリストのコードネームでよくありますよね。
アブー・バクル・アル・バグダディー(ISの指導者)
の場合は、バグダッド出身のイラク人ですよ。ということが分かるようになっています。
フランス人だと アル・フランシ
チェチェン人だと アル・シシェニ
ISではない別組織でしたが日本人(?)と言われいた方はビデオでアル・ヤパーニ
と言われていました。
出身地で呼ぶのは名前とプロファイルが一瞬で入ってくるので結構実用的。外国人の場合は国の名前だけど、イラク・シリア人の場合は都市名で呼ぶ(人数が多いし、現地人としてはバックグラウンドがもっとはっきり分かる)のだと思います。
参考↓