イタリアの積極的疫学調査、チャイナの経験から分かること。⑤(『市中感染』の意味と対ウイルス戦への『動員』)
昨日からとうとう日本でもPCR検査が保険適用され、保健所による検査妨害なしで検査が可能になりましたね。
指定医療機関などが決まっており、相変わらず重症例しか検査はしてもらえないようですが、保険適用の甲斐あって1日に50件以上のハイペースで感染者が確認されてきています。
というわけで、今日は日本国の輝かしい防疫対策について、疫学用語の解説を含めてまとめます。
- 『市中感染』はパンデミックの始まり
- 怖すぎる、日本の市中感染の実態
- 『暗数』はサヨクの陰謀論ではない
- 「これは『戦争』だ!」
- SelfishnessとMobilization
- 遠藤誉先生の語る中国共産党の初動の舞台裏
- 他、英語のnewsで出てくる疫学用語
『市中感染』はパンデミックの始まり
市中感染は英語ではcommunity acquired caseと言います。
感染経路を辿れない感染確認症例のことで、市中に不特定多数の感染者がいることが想定され、蔓延のサインになります。
医療系YouTuberキャンベル先生が3月5日の動画で
「ついにUKでも市中感染が出てしまった」
と嘆いていますが、ぶっちゃけ、日本は市中感染なんて二月の前半から出ています。
怖すぎる、日本の市中感染の実態
愛知に新幹線で出張した東京都の男性会社員
こちら↓さらっと書いてありますが、
2月10日に発症したという都内の40代男性会社員は感染経路が書いてありません。市中感染なのでしょう。
二月上旬に発症した広島の市中感染は3月に入ってから漸く感染確認
さらに恐ろしいのが保険適用が始まった3月6日に広島で感染確認された30代男性のケース↓
2月上旬 発症(咳)
2月15日(土曜日)、16日(日曜日)、20日(木曜日)A医療機関を受診
2月22日(土曜日)、28日(金曜日)B医療機関を受診
3月3日(火曜日)C医療機関を受診
3月4日(水曜日)B医療機関を受診
3月5日(木曜日)D医療機関を受診を受診。新型コロナウイルス感染症の疑いがあり、検体を採取
3月6日(金曜日) 遺伝子検査の結果、新型コロナウイルス陽性と判明
3月7日(土曜日) 感染症指定医療機関に入院
確定診断を受けるまでに4つの医療機関を延べ8回も受診しています。
症状がひどかったのか(喘息持ちなどなら、若くて熱がなくても咳がひどく中等症相当になると思う)、神経質な人だったのか分からないけどヤバすぎ。
- 2月上旬に既に市中感染が起こっているのに一ヶ月も全く気がついていなかった事実(この男性が広島市の最初の感染確認者)
- 医療機関に何度もかかるほどひどい咳症状のある患者に(マスク着用とはいえ)ウイルス撒き散らかさせていた事実
保健所の検査ブロックがどんなに害悪かめっちゃ分かる😱😱😱
市中感染二人発覚した福岡市の不気味な沈黙
2月中旬に発症した二人が二人とも市中感染だったにも拘らず、その後感染確認された人がいない福岡も怖すぎます↓。
ちなみに、福岡のこれまで行われた検査は105件(陰性103件;3月7日午前9時現在)とのこと。
政令指定都市レベルでコレですよ。
さらにヤバい高知の集団感染
こちらは、大阪のライブハウスでの集団感染の原因になったと思われる高知の女性看護師の例ですが、
高知県によると、3日午後7時半現在、同県で感染が確認されたのは高知市の女性看護師と母親、友人の女性病院職員の3人。女性看護師は2月15日、大阪市のライブハウス「Arc」を訪れているが、友人と最後に会ったのはライブ前日の14日で、友人はライブに参加していないが感染していた。
女性看護師は友人よりも10日ほど早く、のどの痛みなどの症状があった。高知市保健所は「一般的に症状が先に出た人を感染源と捉えるので、女性看護師は友人と会う前に感染した可能性が高く、友人は面会時に感染したとみられる」と説明している。現在、感染経路を調査中だが「日常生活の中で広がって経路を追えない『市中感染』が起きている恐れもゼロではない」としている。
問題はこの方の職業が看護師(病院関係者)であることで、勤務先の病院などで院内感染が起こっていないか積極的疫学調査を行う必要があります。
高知(あるいは国内の旅行先のどこか)の市中で感染したのか、院内で看護に当たった患者さんから感染したのかは不明ですが、この方も他の例と同じく2月の上旬から喉の痛みなどがあったようなので、それを考えると、既に二月上旬には市中感染の発症が起き始めていることになります。
「『市中感染』が起きている恐れもゼロではない」
『市中感染』は確実に起きているのです。
『暗数』はサヨクの陰謀論ではない
「『暗数』ガー!」を陰謀論みたいに言う安倍政権信者いるけど、
『市中感染』が起こっているというのは『暗数』が存在するという意味です。
containという疫学用語(?)がよく出てきますが、これは、『抑え込み』『掌握』みたいな意味です。
市中感染=comunity acquired caseが存在するというのは、containが出来ていないという意味です。つまり、防疫体制が不十分あるいは、ウイルスに敗北しているということ。
- 「日本は感染者数がヨーロッパより少ない」
- 「韓国は感染者数が中国の次に多い」
とか言っている人は、市中感染が既に一ヶ月も前から出ている日本という国にまだ新型コロナウイルス感染者が431人(3月7日ヨーロッパ時間10時現在)しかいないと思ってるんですかね?
昨日今日で感染確認された人々が一ヶ月も前からウイルス撒き散らかさされたまま放置されていた事実に震えるよ😱😱😱
(本人達だって知らなかったらどうしようもないし、不本意だったんだから、これは行政の未必の故意)
「これは『戦争』だ!」
こちらは3月6日付でChannel 4にアップされた動画ですが、専門家の方が
「これは非常事態。チャイナの戦時動員体制を見習うべき。そうでないと封じ込めなんて出来ない」
と発言していました。
- チャイナの発表する数字を疑う人もいるが、数字が多少嘘でもWHOの視察団がチャイナを再訪し「劇的に状況が改善している」と評したことには間違いないだろう。
- そろそろUKも学校の休校を考えるとき。シンガポールは1月中旬の段階で最初の感染者を確認したが、現在の感染確認者数でも100人台前半で今となってはUKよりも少ない。香港やシンガポールは厳格な社会的介入(social intervention)を行うことによって感染者の抑制に成功している。UKもそれに習うべきだ。
- (「今の段階で休校措置をするのは大げさすぎじゃないですか?」)ダイアモンド・プリンセスの検査例を見ても分かる通り、20歳未満の若年者も感染するのは明らか。休校には効果がある。
- 新型コロナウイルスの死亡率には諸説あるが、もしこのウイルスの死亡率が1%だったとしても、死亡率は季節性インフルエンザの10倍。この世界で誰も免疫を持っていないウイルスであり、15-70%の人が感染する確率があるということ。この感染率は季節性インフルエンザの3倍であり、10倍の致死率のウイルスが3倍の感染率で広がったらどれだけ大変なことになるか推して知るべしだ。
- アメリカ合衆国の状況については大変に心配している。アメリカのCDCは研究機関としては素晴らしいが、国全体での統一された防疫の法律もなく、実際の検疫業務の権限は各州や自治体にある。国民皆保険でもなく、国全体としての一斉且つ一貫した対応が取りにくい。
ダイアモンド・プリンセスのほぼ全数検査はそこそこ参考になっているようですね。骨を拾って頂けて良かったです。
SelfishnessとMobilization
先ほどの動画でアナウンサーが言っていたのは、
「西側諸国のわたしたちは自己中心的すぎて国家からの動員に耐えられないのでは?」
と言っていました。専門家の方は、
と言っていましたが、西洋人はアジア人に比べてワガママだし、じっとしていることに耐えられないので難しいだろうなと思います。
テネリフェやインスブルックのホテル閉鎖で閉じ込められた人たちがSkypeで不満たらたらでしたし、ダイアモンド・プリンセスの乗客の方達も、船の上という閉塞感もあってしんどかったようです。
新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」などで個室待機した人たちが、「死にたい」「船から飛び降りたい」などと訴える事例が、2月1日からの約1カ月間で91件に上っていたことが分かった。災害派遣精神医療チーム(DPAT)などの活動状況を日本精神科病院協会が公開した。
クルーズ船、21人陽性 米カリフォルニア沖―乗員1100人は船内隔離へ同協会によると、DPATは2月2日~3月3日、クルーズ船乗客や政府チャーター機で中国・武漢市から帰国した人らの心のケアに当たった。医師や看護師、精神保健福祉士ら約550人が出動した。
活動中に寄せられた相談では、不眠や不安感といったストレス関連症状が101件と最も多く、次いで「死にたい」といった緊急を要する精神状態が91件に上った。緊急搬送はなかった。
ストレス症状を訴える人は、狭い室内に閉じ込められたことによる拘禁反応を起こした例が目立った。緊急を要する状態の人では、夫婦の一方がウイルス検査で陽性となり、離れ離れになったことによる不安を訴える人が多かったという。
特に、おばさん同士で韓流聖地巡礼したりする日本人と違い、西洋人はカップル文化で夫婦がいつも一緒なのが当然なので辛いだろうなと思います。
特に、一緒にクルーズ船旅行にいるような年配のおしどり夫婦は。。
遠藤誉先生の語る中国共産党の初動の舞台裏
- 人の移動を禁止する
- 人と人との接触を最小限にする
キャンベル先生はチャイナの防疫戦争を大絶していますがこちらの動画では遠藤誉先生が、笑い事じゃない(日本政府も似たり寄ったりで到底笑えない)中華の初動の舞台裏を淡々と語ってくださいます。
中国の対応の立役者は、SARSの流行を抑えた英雄ウイルス学者鐘南山さん(中国工程院:こちらの記者会見で真ん中にいらっしゃるおじいちゃま↓)
と中国でのHIV流行を力技でコントロールした経験のある李克強さん
鐘南山さんはこの肺炎診断AIにも関わったらしいです。
他、英語のnewsで出てくる疫学用語
Attack rate=発症率(ウイルスに感染した対象が症状を呈す確率。コロナウイルスは若年者ではattack rateが低い)
Reactivity=感染者を見つけた時点で消毒・休業・接触者を隔離するなどの措置をすること。
Proactivity=感染者と接触者を減らすために学校の休校やイベント中止などの措置を行う。
Quarantine=隔離