イタリアの積極的疫学調査、チャイナの経験から分かること。⑥（遅すぎたミラノ封鎖・医療崩壊の巻き返しは可能か？）
イタリアのアウトブレイクからの経過を見ているのですが、
遂にイタリアが北イタリアの封鎖に踏み切ったので👏👏👏
今日はこの続き↓です。
権威主義・計画経済のチャイナはともかく、
ヨーロッパのような資本主義・自由主義社会では感染症対策での『準戦時動員』が難しい
というお話です。
- イタリア、感染確認が1日に1000人越えで1600万人を隔離
- イタリアの反応
- 今回閉鎖される地域↓
- 積極的疫学調査が重要だと思う理由
- イタリアの感染拡大と医療従事者への感染はPCR検査をしたからではなく、しなかったから
- 民主主義社会では、民衆を説き伏せる力がなければ政治的決断が出来ない＝積極的疫学調査は政治的決断の目安になる
- これが『政治』
- 医療崩壊の巻き返しはなるか？
- 福建省で新型コロナ隔離ホテル倒壊とイタリアの温州移民
- イタリアのコロナウイルスの由来（ブラジルでのシークエンス結果）
- 幾つかの経路で持ち込まれた可能性も
- ミラノのファッションウイークを許してはいない
イタリア、感染確認が1日に1000人越えで1600万人を隔離
「どいつもこいつも感染してやがる！😱」
っていうPCR検査技師さんの発狂の声が聞こえてくるようです。
正直、 遅すぎって思うし、やっとか😩って感じですよ。
このエントリー↓にも書いた通り、イタリアの対応は素早かったけどぬるかったと思います。
- 最初から、ヴェネト・ロンバルディアの全体を封鎖すべきだった（この二州はこの時点で即日学校閉鎖しています）
- 国境を閉鎖すべきだった
とわたしは思います。気休めに感染者の多数確認された自治体を封鎖し、わざわざEUに保健相を派遣して言ったことが
「国境を閉鎖しないでくれ」（既にオーストリアに国境封鎖されていた）
ですから。
ミラノがホットスポットであることは明白だったでしょ？
結果的に、二週間もヨーロッパ中にウイルスばら撒き続けたんだから。
（国境を閉鎖しないまでも、ヨーロッパ域内では北イタリアから来た人を警戒し、コロナ検査して自衛する傾向にあったけど、撒き散らした事実には変わりない😓）
イタリアの反応
3分12秒頃〜 ボローニャからの中継（この女性アナウンサー、いつもはミラノから中継してたんですけど、封鎖前に急いで移動したんでしょうか？）
- 「封鎖措置が遅すぎたのでは？もっと早くに封鎖すべきだったのでは？」
- 「例え部分的にでもミラノを閉鎖するなんて！イタリアの経済はどうなるんだ？」
という声があるそうです。
また、飛行機や電車はまだ動いており、封鎖地域から出ようとしている人もいる（？）し、観光客はどうなるのかなど不透明な部分も多いとのこと。
今回閉鎖される地域↓
積極的疫学調査が重要だと思う理由
日本の政府を擁護して韓国を貶したいために
「イタリアと韓国はPCR検査をやりすぎて感染や死亡者が増えている」
みたいなことを発信される方がいますが、わたしはそれは違うと思います。
大量の死者が出ている韓国とイタリアは、陽性の患者を全部入院させて医療が崩壊したことが原因。日本は重症患者以外は検査しない方針を貫くべきだ。 pic.twitter.com/X6XTUtQSzn
— 池田信夫 (@ikedanob) 2020年3月7日
もちろん、このtogetterの医師の方↓みたいに
「不安な人は全員検査すべき」
みたいな無制限な検査には反対ですが、イタリアが思い切った政策に踏み切れたのは
- 検査の陽性率が10%
つまり、今回閉鎖される北イタリアの地域では住民の最大10%が感染している状態であり（誰でも検査しているわけではないと思いますので『最大』と記載します）、ここを閉鎖しないとどうにもならない
ということが判明し、これを論拠に国民を説得できる、或いは、これをしなければならないという確信が持てたからだと思います。
イタリアの感染拡大と医療従事者への感染はPCR検査をしたからではなく、しなかったから
イタリアは、2月初めにはチャイナ全土からの航空便を発着禁止しており、コロナウイルスについて、春節の団体旅行も大してきていなかったのであまり警戒していなかったと思います。
ドイツは国民性的に潔癖なのでかなりアジア人や中華系に過敏になったり（ナチの本領発揮）、ウイルスの分離や情報収集などやっていたようですが（有名なコッホ博士のコッホ研究所などでチームを編成している模様）、イタリアはそこまで神経質になったり、流行に対して準備したりしていたかどうか。
イタリアはインフルエンザ様症例にも、感冒症例にも肺炎症例にもPCR検査を行わず、結果的に、知らずに診療した医療従事者が感染し市中にも蔓延、医療崩壊してしまいました。
国民性的にあまり潔癖主義じゃないのでボヤッとしていたら大火事になってしまい、ローマ帝国以来の不屈の火消し魂を発揮している←今ココ！
ということです。
果断なトップダウンとグダグダであんまり言うこと聞かない庶民の様子を見ていると
ローマ帝国やなぁ😩
と感慨深いです。
逆に、愚鈍なトップと下々の努力で感染対策してるのも大日本帝國っぽい↓
（学童に「感染させるな」とか無理ゲーでしょ😓）
民主主義社会では、民衆を説き伏せる力がなければ政治的決断が出来ない＝積極的疫学調査は政治的決断の目安になる
ミラノはイタリアの金融センターであり、経済のコアです。
今回封鎖された地域は人口もGDPもイタリア全体の約四分の一を占める地域で日本だと東京＋首都圏に当たります。
科学的に言えば、二週間前に封鎖すべきだったとは思いますが、これだけの国家的決断をするにはPCR検査のデータの蓄積と、差し迫った医療崩壊の惨状がないと、国民の同意を得られなかったはずで、政治的決断としては可能な限り早かったと思うし、公衆衛生学的に政治決断を支持する意味で、積極的疫学調査には意味があったと思います。
また、イタリアでの検査の蓄積のおかげで、無症候感染者の割合・重症者の割合・リスクなど、様々なウイルスの生体が判明し、多くの国にシェアされています。
韓国はその点、大鄭（テグ）という比較的首都から離れ、人口もそんなに多くない場所がエピセンターになったので封鎖措置が取りやすく、有利だったと思います。
（週14万件PCRしてもあまり感染者が増えておらず、封じ込めがある程度成功していると思われます）
日本はマジで検査まともにしてなくて、
- 「市中感染が出てるから自粛〜」
- 「北海道が休校したから休校〜〜」
みたいなノリだから説得力がなさすぎて反発が出るし（エビデンスなしで政治的判断をする危うさは反発が出るのは当然だと思う）
安倍信者vs反アベ
みたいな党派争いに終始してるのが滑稽だし、母国がこんな風に成り下がってしまったことに泣ける😢
これが『政治』
Italy had confirmed 5,883 coronavirus cases by Saturday, of which 233 people had died, in the biggest outbreak outside Asia. Italy has tried to respond with more moderate restrictions, such as banning many public events, but before Saturday it only imposed lockdowns only on small areas in the country’s north, with a population of around 50,000.
この辺の一説にイタリア政府のジレンマと政治的判断に至った理由が読み取れます。
The rapid daily rise of infections and deaths is now forcing more radical action.
In addition to being Italy’s most populous region, Lombardy is also the country’s industrial heartland, and putting it under full quarantine is likely to deal a severe blow to Italy’s already-struggling economy.
最も豊かで人口の多い地域を閉鎖することが既に苦境にあるイタリア経済にとってどれほどの痛手になるか。
わたしは科学的に見れば明白に正しい判断でも、
『民主主義国家において政治的に決断する』
というのは相当ハードルが高いことなんでしょう。
（そういう意味では、台湾の蔡英文総統やシンガポールの大統領はすごい）
それを今回、イタリアは『ヨーロッパで初めて』やった、と。
医療崩壊の巻き返しはなるか？
ジャーナリストの福島香織先生が、
というようなことを言っておられたのですが、今回のイタリア政府もそれは意図もしていると思います。
- Essential reason以外での移動を禁ず
ということなので、他所への重症患者の搬送や医師・看護師の招集・物資の搬入オペレーション（今回は大規模なのでイタリア軍の兵站力も使いそう）など以外は閉鎖ということなのではないかと思います。
他地域でこれ以上感染が拡大したらそれも叶いませんが、この二週間で北イタリアの医療機関は相当疲弊していると思うので少しでも巻き返せればいいなと思います。
持病はあってもつい昨日まで元気だったおじいちゃんおばあちゃんが亡くなるのは辛すぎる。（ヨーロッパの老人は体が動く限りは家にいる人が多いです）
福建省で新型コロナ隔離ホテル倒壊とイタリアの温州移民
そう言えば、イタリアって温州市出身の中国人が10万人も住んでるんだよね。
検疫でコロナ陽性になってたよね。
イタリアから中国（ワォンジョウ？温州？というところ。ここからの移民だけで10万人もイタリアにいるらしい。）に里帰りした某中華料理店の店員8名が、チャイナ入国時に検査を受けたところ、全員コロナウイルス陽性だったとのこと。（驚異の陽性率😂これがクラスタ😂）
って思って記事を二度見したらホテルが倒壊したのは泉州市だし温州市は浙江省でした。
ミラノやローマの他に、トスカーナ州のプラートというところにもチャイナタウンがあり、多くの人が服飾産業に携わっているようです。
チャイナタウンの様子↓
イタリアのコロナウイルスの由来（ブラジルでのシークエンス結果）
イタリアのミラノから帰国した感染者からウイルスを分離し、ゲノムシークエンスをしてくれました。
ブラジルグッジョブ！
ブラジルの科学者たちは、2月下旬に国内初の新型コロナウイルスの感染例を確認した際、すぐにウイルスの遺伝子配列を解読した。そして、すでにオンライン上で公表されていた150以上の配列（多くは中国からの情報）と照らし合わせた。
感染者はサンパウロ在住の61歳で、2月にイタリア北部のロンバルディア地方を旅行していたため、イタリアで感染した可能性が高いと思われていた。しかし、感染者のウイルスの遺伝子配列は、さらに複雑な履歴を物語っていた。それは、感染した状態で中国から来た渡航者が、ドイツでのアウトブレイクならびにその後のイタリアでの感染拡大に関連するというものだった。
このブラジル人男性のウイルスはSNP（遺伝子変異）の解析結果、1月にドイツで分離され、シークエンスされたウイルスから派生したものだと思われるのこと。
系統樹においてミュンヘンから分岐する枝の「患者1」は、ババリア（ドイツ南部の州、バイエルン）の33歳のドイツ人ビジネスマンで、1月24日に発症し、のどの痛みと悪寒を訴えた。症状が出る前に、上海から来た同僚と会っており、この人物も後にウイルス陽性が判明したという。
それから4日以内に、患者1の勤務する企業「べバスト（Webasto）」の従業員にさらに陽性が判明した。本社を閉鎖したが十分ではなかった。遺伝子データによると、ミュンヘンの事例はヨーロッパ全体のアウトブレイクのかなりの部分に関連している可能性があり、そこにはイタリアの3000件以上の症例も含まれるという。
これって、会社の閉鎖で暇になった誰かがミラノに出かけて撒き散らかした微レ存じゃない？
（ドイツ人のイタリア好きはガチ←イタリア人嫌いだけどイタリアは好きとかもいる）
幾つかの経路で持ち込まれた可能性も
春節の始まりと同時にチャイナは自国民をほぼ出国禁止にしましたし、アリタリアは二月の初めには中国の本土便を欠航していたと思うので、
イタリアには中国から直接ではなく、ドイツ経由で持ち込まれた
というのは、大いにあり得ると思います。
が、ヨーロッパで流行っているウイルスを見ていると幾つかのブランチに分かれているように見えるので、イタリアでは幾つかの異なる由来の、異なる系統のウイルスが同時に流行っている可能性も否定できないと思います。
ミラノのファッションウイークを許してはいない
イタリアはたくさん亡くなっててお気の毒だし、政府もよくやってると思うけど、
この状況に気づかずに2/18〜2/24のミラノファッションウイークをやって世界中にウイルスを撒き散らかした愚行は許しがたい。
【スナップ】ジャケットの着こなしを楽しむ 2020-21年秋冬ミラノ・ファッション・ウイーク | WWD JAPAN.com
こういう過ちを犯さないためにも、戦略的PCRは大切です。
