カタールはアラビア半島から突き出たこぶのようなところにある首長国家です。
ラマダンの夜明けにバーレーンから始まった断交宣言。カタールは、一瞬にして実質的な陸上封鎖・空路封鎖を受けて、準戦争状態になりました。
現在の状況は下記↓のようになっているようです。
Qatar is being isolated by its neighbours but they're not completely without support from other nations. pic.twitter.com/ITPy3eA0b3
— TRT World (@trtworld) 2017年6月12日
イランからは野菜や果物
トルコからは乳製品・肉など
が続々空輸されているとのこと。
Turkey and Iran are sending food to Qatar after its neighbors sealed off its borders pic.twitter.com/yv6vNHBeB8
— TRT World (@trtworld) 2017年6月12日
トルコ語の食品表示(アルファベット)のまま冷蔵庫に並べられている乳製品・肉類。中身が分からない人のために英語・アラビア語・ウルドゥ語(?)などでビラあり。↓
イランからの空輸についての記事↓
なぜイランとトルコなのか?というと、中東のイスラム教国の中で、サウジに軍事力で互角以上に対峙できる国がこの二つだけだからです。
Why are major Arab powers turning against Qatar? pic.twitter.com/PuNS6rOk8O
— TRT World (@trtworld) 2017年6月11日
他の国はなんとなくサウジの顔色(とお金)を見て同調・あるいは中立を守るしかなく、動けません。
実質的な海上封鎖(援助物資を運んでいると敵とみなされて船や飛行機を攻撃される恐れもある)を宣言しているサウジが手を出しにくい、この二国じゃないと孤立したカタールに支援なんて出来ないということですね。
カタールの周辺国で、サウジに
「やんのかゴルァ!」
できるのがこの二国だけということです。
特に、このデータで見ると、イランは潜水艦30艦を持っているけれど、サウジは持っていないようなので、完全な海上封鎖は難しいのかな。
カタール軍↓は、イエメン空爆の有志連合にも加わっていたようですが、断交を受けて即時撤収(中東の窓 : カタール部隊のイエメンからの帰還)。
お金持ち国家なので装備は申し分ないのでしょうが、人口が少ないのでどうしても、兵員が不足しますよね。
トルコはさらに、カタール危機を受けて急いでカタールへの軍駐留の法案を議会で決議をしたそうです。
なぜトルコなのか?というと、カタールには米軍の空軍基地(中東の司令部)があるのですが、イランは対米関係が悪くサウジへの刺激も強すぎることと、トルコはNATO加盟国であり、既にカタールに基地を持っていて(2014年合意、2016年開設、中東の窓 : カタールのトルコ軍基地より)、百名ちょっとの兵士が駐留中であり、増派という形で簡単に対応可能だということがあるようです。
サウジの王子さまがイエメン情勢が進まないことに業を煮やして、カタールに八つ当たり(?)モードなのかな……という疑惑があります。カタールには米軍基地がありますが、トランプがリヤドの会議でサウード王家と『サウジのカタール侵攻には関与しない』密約などがされていた場合、米軍はサウジが米軍基地に手を付けない限りカタール防衛には動けません。
カタールが火の海になってしまうリスクを考えて即座に動けるトルコはすごいなぁと思います。
エルドアン大統領は「独裁独裁」と言われ、西側メディアでは評判が悪いですが、独裁というのは、スピード感を持って決裁し、実行に移せることで、
独裁者がまともな感覚の持ち主で
信頼できる情報を元に妥当な判断を下せる
情勢の変わりやすい
ときには非常事態的には有効な体制かもしれないと思います。
いま中東は特に大変なときなので、トルコは
トルコがトルコという国として存続する
為には彼のような指導者が必要なのかもしれません。
例えば、今回の場合、イランやトルコが即座に食糧支援に手を上げなければ、カタールは物資不足で国内が大混乱になっていた可能性があります。
外国人出稼ぎ労働者90%のカタールのような国家の場合、外国人の一斉退去で国内の機能が麻痺したり、食べ物の奪い合いや混乱に乗じた『カタール人狩り』のような治安の悪化が起こってもおかしくない(そこで、治安維持の名目でサウジ軍が侵攻してくる)。
大国が大国としての機能を果たさなければ、周辺(弱い国)から秩序が崩れてしまうということもあり。。
アメリカが相対的に弱くなった上に現政権がぐだぐだなので、地域大国のプレゼンスがますます大きくなりそうな4年間の幕開けですね。