さて、今回はスーダンの駐エジプト大使召喚を題材に、紅海覇権に乗り出したトルコについて書こうと思います。
こちらは1月5日付のニュース↓。
スーダンの外務省が駐エジプト大使を召喚したという内容です。
召喚の理由は、ハラーイブ・トライアングルという国境エリアの領有権を巡るものらしい。
英語では、"Hala'ib Triangle"と言い、平たく言うと、イギリスが地形を無視して真っ直ぐに引いた国境を、地形に沿って（山脈の峰線に沿って）引き直そうとして揉めている部分であるとのこと。
ここで思い出すのは2017年に起きた紅海に置ける二つの領土移譲事件。
です。
まずはカタール団交の直後の6月、エジプトが紅海の島をサウジに事実上『売った』ときの記事から↓。
チラン海峡というアカバ湾のchalk pointに当たる地政学的な要衝中の要衝なのに😨
エジプトはスエズ運河というドル箱をあっさり売っちゃったりした歴史もあるし、地政学的な後先をあまり考えないお国柄なのかな？
この通り、アカバ湾というのはエジプト・ヨルダン・イスラエル・サウジアラビアが国境を接し、ヨルダンにとっては最大の港がある重要拠点でもあります。
その出口をふさぐようにある二つの島。
シーシ大統領も軍人ならその価値が分からないわけないだろうに。
エジプトのシナイ半島から見たチラン・サナフィールの島↓
こんなに近くに見える島を、みすみすサウジに渡すっていうのはやっぱり国民としても納得できないよね😓
サウジがここを抑えることによってイスラエルがパレスチナをさらに孤立させることができるという記事も↓。www.aljazeera.com
アカバ湾のチョーク・ポイントをサウジが握ることによって、今まで外交関係がなかったサウジーイスラエル間の繋がりが増す＝この二つの島の移譲はトランプのいう『中東和平』のプランの一部なのだということ。
Israel will seek to parlay the diplomatic capital it has gained in approving the handover of the islands into Egyptian and Saudi help on the Palestinian issue.
Israel would try to persuade Cairo and Riyadh to assist in its plans to impose on the Palestinians a potentially disastrous final-status arrangement, said Issa.
The strategy already has a name among Israeli and American officials, who call it the “outside-in” approach.
The US would sponsor regional peace agreements between Israel and Arab states, fostering the necessary favourable conditions for a deal between Israel and the Palestinians.
パレスチナ問題はもはやアラブにとってはイランに対抗してイスラエルと握るための足枷にすぎないので、パレスチナを締めて和平交渉に持ち込みたいのだと。
most Arab countries now preferred to focus on Iran over the Palestinian issue. “The Palestinians are mostly seen as a hurdle to their regional strategy.
“If the Americans cannot force the Palestinians to accept a ‘peace deal’ that is good for Israel, they will turn to Saudi Arabia and Egypt to make them do it for them.”
Issa believes the outlines of a US-Israeli-Saudi-Egyptian plan for the Palestinians are starting to emerge.
そんなエピソードも忘れかけたクリスマス頃、事態は再び動きました。
曰く、
「エルドアンがスーダンにあるオスマン時代の港をカタールのお金で整備する？？？」
ふぁっ😦？？
件のオスマン帝国の港というのはスアキン島という川中島のようなところ↓です。
紅海を挟んでジェッダやメッカの対岸に当たる部分で、アフリカのイスラム教徒がメッカ巡礼の際に使っていた由緒ある港であり、トルコとしては、ソマリアに既に持っていた二つの港、カタールの港と合わせて、アデン湾を取り囲むような海洋パワーを手に入れることになるらしい。
ソマリア・カタール・ジョージア・アゼルバイジャンに置けるトルコの軍事基地については既に2016年こちらの記事にWayne Madsenという（陰謀論で有名らしい）方が書いています。
このサイトに訳↓があり、偶然発見しました。
そこにさらに、スーダンが加わり↓、やはり海軍基地になるようですね。
これはサウジはピキピキだなぁと思っていたら案の定こんな記事が↓
Egypt is also worried about a powerful country like Turkey, which supports the Muslim Brotherhood, having direct access to a neighboring country. Egypt exiled leaders of the Sunni Islamist organization, which supported the previous administration.
エジプトはムスリム同胞団を支援するトルコが隣国に入ることに大発狂😫
Saudis fear that a base in Sudan controlled by Turkey — which is cooperating with Iran — could become a springboard of support for the Qatar- and Iran-backed Houthi rebels in Yemen. Sudan, despite its promise to remain neutral, gives the impression that it is supporting Qatar in its conflict with Saudi Arabia, Egypt and the United Arab Emirates. A partnership with Turkey is considered a concrete indicator of the change in Sudan’s axis.
サウジは「カタール（嘘でしょ？😨）とイランが支援するイエメンのフーシー派とトルコが協力するための軍事基地だ。トルコはカタール断交について中立を保つなんて嘘ばっかり。スーダンは裏切り者だぁあああ😫」
というトンデモ論を展開。
The Gulf News commented, “Iran can use the new Turkish base in Sudan to ship more weapons to Houthis. Turkey, by using the new military facility, could send more soldiers to Qatar or intervene more in Egypt by manipulating the Muslim Brotherhood. This no doubt will worry Jordan as much as Egypt. With Turkish and Sudanese provocations, Sudanese aspirations for Halayeb [the disputed area] can be reignited.”
UAEのメディアGulf Newsは、
「イランはこのトルコの新しい基地を使ってフーシー派に軍事援助できる（😂）。トルコはムスリム同胞団を送り込み放題でヨルダンとエジプトは気が気じゃないし、トルコとスーダンの協力で係争地のハライブもスーダンのものになる😱」
という突っ走ったトンデモぶり。
この大発狂を見越してか（さすが）、トルコはエルドアン大統領のアフリカ歴訪と同時にサウジアラビアに首相を派遣したものの、あまり意味がなかったとのこと。
アラブ世界（主にサウジとUAE）の大発狂をなんと日本語で書いてあるページを見つけましたので貼ります。
■軍事同盟
スーダン訪問に関してアラブ世界に最も疑問を引き起こしたのは、スーダン・トルコ・カタールの参謀総長らが会談を行ったことだ。エルドアン大統領と同じく、カタール軍司令官も先週アフリカを訪問した。エルドアン大統領は、スーダンがトルコにとってのアフリカの扉となりえると述べたが、スーダンはあらゆる隣国と問題を抱えている。南スーダン、エチオピア、エジプトとの間の問題は知られている。またトルコが南スーダンに軍を派遣しているにもかかわらず、エルドアン大統領が現地を訪問しなかったことは注意を引いた。アラブ世界では、エルドアン大統領のアフリカ訪問は、サウジアラビア包囲網を形成するプロセスだと認識されており、ソマリアとカタールに続きトルコがスーダンのセヴァキン島に軍事基地を建設することが懸念されている。同島はオスマン帝国にとって、同地域の戦略的基地だった。
■軍事協定エルドアン大統領はチュニジアとの間でも軍事協定に調印した。防衛面での協力を想定したこの協定では、チュニジアの軍人がトルコで教育を受けることになっており、防衛面での投資がなされる予定だ。
トルコ語の元記事からの翻訳、感謝・感謝です。
UAEの大発狂が最後にまとめられています。
■UAEからトルコ・イランへのメッセージ
アラブ首長国連邦(UAE)のエンヴェル・ガルガシュ外交担当大臣は、トルコ並びにイランに対する厳しいメッセージを発した。ガルダシュ大臣は一昨日Twitterで「アラブ世界は危機的状況に陥っており、その解決は我々を取り囲んでいるこの地域に対する野望に対して協力して抵抗することにかかっている。宗派ごとの運動やパルチザンは選ぶべき選択肢ではない。アラブ世界は、イランやトルコには支配されない」と述べている。この状況で、アラブ地域における地政学的な争いに際して、サウジアラビア・エジプトと同盟を組む重要性について言及した。アラブ連盟を強化するよう主張した。ガルダシュ大臣のこのメッセージが、ビナーリ・ユルドゥルム首相のサウジアラビア訪問と同じ時期に出されたということに注意すべきである。目下UAEとトルコ間の緊張は、カタール危機によって一層増している。さらに、先週UAEのアブドゥッラー・ビン・ザイェド・エル＝ナーヤン外相が、メディナの英雄であるファフレディン・パシャについて「盗賊」と述べたことが、トルコで激しい反発を呼んでいる。
＊ビナーリ・ユルドゥルム首相というのは今のトルコの首相です。
センターがユルドゥルムさんで、左側がチャウショール外相。
チャウショールさんは、このエントリー↓でドイツの外相のお家に招かれてた方ですね。
二人とも小柄だけど立派なお顔💁
メディナの英雄ファクレディン・パシャ云々については、エルドアン大統領直々にUAEにゴルァしていました。
日韓も歴史問題で色々あるみたいだけど、中東の歴史戦も面白い😂
流れとしては、
①イランがシリアを支援
↓
②サウジアラビアが焦ってイエメンのイランのpower projection（フーシー派）に戦争を仕掛ける
↓
↓
④イエメンに苦戦するサウジは焦ってカタールと団交。紅海を抑えようとエジプトから紅海の島を買う。
↓
⑤陸路をイランに阻まれているトルコも紅海に出ようと、カタールで軍事演習しつつサウジに粉を掛ける。
（この記事↑にはトルコがサウジのどこに基地を作りたかったか不明ですが、ペルシャ湾側には既にカタールの基地があるので多分、メッカのある紅海側だと思われます。）
↓
⑥トルコはサウジに基地建設を断られて紅海の対岸のスーダンに粉を掛ける。
↓
⑦内戦で消耗してエジプト（完全にサウジマネーにコントロールされている）との折り合いも悪いスーダンは、開発援助と軍事支援目的にスアキン島をトルコに貸借。
↓
⑧スーダンもお金と軍事支援で一石二鳥。トルコもインフラ投資＋オスマン帝国の領土回復で一石二鳥。
↓
⑨UAE・サウジ激おこ💢💢💢
エジプトを嗾けて係争地のハライブでスーダンに圧力。
↓
10スーダンは駐エジプト大使召喚。←今ココ
サウジは、こんな目と鼻の先にトルコの軍事基地が出来たら本当にいやだよねー😨
ロシアの軍事専門家小泉悠さんみたいに、日本人のトルコの軍事専門家とかいないんですかね〜
エルドアン大統領のパパは日本でいう海上保安庁の職員さんだったようなので、意外と海軍力に力を入れてそうな感じがしています。
地中海方面で、アルバニア辺りにも海軍基地を作るんじゃないかなと予測してみます。
チュニジアへの軍事協力が海軍基地or立ち寄り込みでってことなら、大西洋に出やすくなりますしね。
そうなったらイタリアとギリシャはピキピキ💢💢💢ですよ。。
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